
「求人を出しているのに、なかなか応募が来ない」
「以前より製造スタッフの採用が難しくなった気がする」
製造業の採用に携わっていると、そんな感覚を持つことがあるかもしれません。
では、実際の福井県の採用市場はどうなっているのでしょうか。
2026年7月の福井県の有効求人倍率は、就業地別で1.69倍。有効求人数18,740人に対して、有効求職者数は11,422人となっています。
一方で、前年同月と比べると有効求人数は4.6%減、有効求職者数は4.8%増となっており、「人手不足が一方的に悪化し続けている」と単純に見ることもできません。
それでも求人倍率は1倍を上回っています。
企業が求職者を選ぶだけではなく、求職者側にも「どの会社に応募するか」を選べる余地がある市場だと考えられます。
では、そんな市場で製造業はどう採用していけばいいのでしょうか。
今回は数字を紹介するだけではなく、
「この採用市場を、自社の採用にどう生かすか?」
というところまで考えてみます。
目次
福井県の採用市場は今どうなっている?
まずは福井県全体の状況です。
福井労働局が公表している2026年7月のデータを見ると、次のようになっています。
| 項目 | 2026年7月 |
|---|---|
| 有効求人倍率(就業地別) | 1.69倍 |
| 有効求人数 | 18,740人 |
| 有効求職者数 | 11,422人 |
| 新規求人数 | 6,657人 |
| 新規求職者数 | 2,677人 |
有効求人倍率だけを見ると、
「福井県は人手不足だから採用が難しい」
という結論にしたくなります。
ただ、採用担当者として重要なのは、その数字を見て終わらないことです。
求人倍率が1倍を超えている市場では、企業が応募者を比較するのと同じように、求職者も複数の求人を比較できます。
つまり、
「応募してくれた人をどう選ぶか」
だけでなく、
「そもそも応募先として自社を選んでもらえるか」
も考える必要があります。
採用市場の数字は、採用が難しい理由を説明するためではなく、自社の採用方法を考える材料として見ることが大切です。
製造業は実際に人手不足なのか?
福井県は2026年度の「人手不足業就職チャレンジ応援事業」で、
・建設
・運輸
・介護
・IT
・製造
の5業種を「人手不足業」の対象としています。
製造業では、オペレーターや組立工などが例として挙げられています。
つまり、
「最近、製造スタッフが採りにくい」
という企業側の感覚だけではなく、製造業そのものが人材確保を課題とする業界の一つになっています。
ここで気を付けたいのが、
「製造業は人手不足だから、応募が来ないのは仕方がない」
と考えてしまうことです。
人材が限られているのであれば、むしろ重要になるのは、
「限られた求職者に、どのように自社を選んでもらうか?」
という視点です。
本当の採用競合は「近くの製造会社」だけではない

製造スタッフを採用するとき、
「近隣の工場はいくらで募集している?」
「同業他社の年間休日は?」
などを調べている企業も多いと思います。
もちろん、同業他社との比較は必要です。
ただし、求職者も同じ比較をしているとは限りません。
例えば、
「未経験から働ける仕事」
を探している人なら、
製造会社A
↓
製造会社B
↓
物流会社
↓
建設会社
↓
倉庫作業
↓
その他の未経験求人
と、業界をまたいで求人を見ている可能性があります。
つまり製造会社にとっての採用競合は、必ずしも別の製造会社とは限りません。
特に未経験者採用では、
「同業他社と比べて条件が良いか?」
だけではなく、
「この地域で未経験から働ける仕事の中で、自社はどう見えるか?」
という比較も必要になります。
例えば、近隣の物流会社が、
「日勤のみ・未経験歓迎・年間休日120日」
で募集しているとすれば、その求人も製造会社にとって採用競合になるかもしれません。
採用市場を見るときは、「同じ業界」ではなく「同じ求職者を採用しようとしている求人」を見る。
これが一つのポイントです。
経験者を探し続けるか、未経験者を育てるか

もう一つ考えたいのが、採用ターゲットです。
例えば、
「製造経験3年以上」
という応募条件を設定しているとします。
ここで一度考えてみたいのが、
「本当に3年以上の経験がなければ、この仕事はできないのか?」
ということです。
もちろん、資格や専門的な経験が必要な仕事もあります。
一方で、
「経験者なら教育する時間が短くて済むから」
という理由で、経験者に限定している仕事もあるでしょう。
しかし、人材を確保しにくい市場では、経験者に限定するほど採用対象は狭くなります。
そこで考えたいのが、
「経験者を半年探し続ける」
のと、
「未経験者を採用して半年育てる」
のでは、自社にとってどちらが現実的なのか?
ということです。
これは、
「未経験者を採用した方がいい」
という話ではありません。
教育できる人員がいなければ、未経験採用が難しい会社もあります。
だからこそ、
・入社時点で絶対に必要な経験
・入社後に教えられること
・資格がなければできないこと
・経験があれば望ましいこと
を一度分けてみる。
そうすると、
「経験3年以上必須」
だと思っていた仕事が、
「未経験でも可。ただし○○の経験があれば歓迎」
に変えられる可能性もあります。
人手不足の市場では、「どうやって経験者を探すか」だけでなく、
「誰なら採用できるのかを再設計する」
という考え方も必要になってきます。
製造業だからこそ「仕事の中身」を見せる
未経験者まで採用対象を広げるのであれば、もう一つ重要になることがあります。
仕事内容の伝え方です。
製造業で働いたことがない人に、
「製造スタッフ募集」
と伝えても、実際に何をするのか想像できない場合があります。
製造スタッフといっても、
・機械を操作する
・部品を組み立てる
・製品を検査する
・材料を運ぶ
・製品を梱包する
・チームで工程を進める
など、仕事内容はさまざまです。
さらに求職者が知りたいのは、作業名だけではありません。
例えば、
「立ち仕事?座り仕事?」
「重量物は扱う?」
「一人で作業する?チームで動く?」
「工場内の暑さ・寒さ・音は?」
「夜勤や交替勤務はある?」
「未経験者は最初に何をする?」
こうした情報です。
採用担当者にとっては当たり前の職場でも、未経験者にとっては知らないことばかりです。
「製造経験者なら分かるだろう」
という求人から、
「製造未経験者でも働く姿を想像できる」
求人へ変える。
未経験者を採用対象にするなら、ここまでセットで考える必要があります。
市場データを見たら、自社求人を5分だけ見直してみる
ここまで読んだら、実際に現在掲載している自社求人を一つ開いてみてください。
次の5項目はいくつ当てはまるでしょうか。
| 自社求人を見ながらチェック | YES / NO |
|---|---|
| 同業他社以外の求人も採用競合として見ている | □ |
| 「製造スタッフ」より具体的な仕事内容が書かれている | □ |
| 未経験者が最初に担当する仕事が分かる | □ |
| 「必須」と「あれば歓迎」の条件を分けている | □ |
| 経験者採用と未経験者育成のどちらが現実的か検討した | □ |
すべてYESである必要はありません。
例えば、
「未経験者が最初に何をするか書いていなかった」
と気づいたなら、そこから改善できます。
「経験3年以上を必須にしているけれど、本当に必要?」
と疑問を持ったなら、現場責任者と話してみるきっかけになります。
採用市場レポートは、数字を読んで終わりではありません。
自社の採用を一つ見直すところまで使ってこそ、意味があります。
まとめ|採用市場の数字を「採れない理由」にしない
2026年7月の福井県の有効求人倍率は、就業地別で1.69倍。
福井県では、製造業も人手不足業の一つに位置づけられています。
製造業にとって、人材確保が簡単な市場とは言えません。
しかし、
「人手不足だから採れない」
だけで終わらせてしまえば、採用方法は変わりません。
今回、特に考えてほしいのは3つです。
「本当の採用競合は誰なのか?」
「経験者を探し続けるのか、未経験者を育てるのか?」
「未経験者にも仕事の中身が伝わっているか?」
採用競合は同業他社とは限りません。
これまで経験者だけを探していた仕事でも、仕事内容を整理すれば未経験者まで対象を広げられるかもしれません。
そして対象を広げるなら、その人たちにも理解できる求人にする必要があります。
採用市場の数字は、
「採用できない理由」
を探すためのものではなく、
「これからどう採用するか」
を考えるための材料です。
市場が変われば、採用のやり方も変える。
今回の数字を、自社の採用を見直すきっかけにしてみてください。
